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甲状腺疾患

甲状腺は首の前方で、のどぼとけの下に位置し、蝶が羽を広げたような形をした臓器です。代謝を調節する甲状腺ホルモンを産生する小さな臓器で正常の場合は見たり、触ったりしても分かりません。甲状腺ホルモンは心臓や脳・胃腸などの動きや新陳代謝を調節するため、甲状腺疾患では全身のさまざまな症状を呈することが知られています。

主には甲状腺ホルモンが過剰となる甲状腺機能亢進症や逆に甲状腺ホルモンが低下する甲状腺機能低下、そして頚部にしこりができる甲状腺腫瘍などの病気があります。

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甲状腺機能亢進症

甲状腺ホルモンの過剰により、動悸(ドキドキ)、暑がり、汗が多い、疲れやすい、手の震え、体重が減ってくるなどの症状が出現します。
代表的な疾患に「バセドウ病」があります。バセドウ病ではまぶたの腫れや眼球が飛び出すなどの眼の症状も伴うことがあります。
血液検査によるホルモン検査、自己抗体の測定、超音波検査などで診断を行います。

  • 代表的な疾患:バセドウ病、無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎
バセドウ病
症状: 動悸、暑がり、汗が多い、疲れやすい、手の震え、体重減少、下痢など
くびの腫れ、 眼球突出、眼瞼(まぶた)の腫れ
原因: 甲状腺を刺激する体質(自己抗体)ができてしまうことが原因です。その自己体質は甲状腺レセプター抗体(TRAb、TSAb)と呼ばれ、その抗体が甲状腺を無秩序に刺激することにより、甲状腺ホルモンが過剰に産生・分泌をされます。
診断: 甲状腺ホルモン測定、TRAb測定、甲状腺エコーなどを行い診断します。
治療: ①内服治療、②甲状腺摘出手術、③放射性ヨード内服(アイソトープ)治療の3つがあります。それぞれの患者さんに適した治療法を説明します。
① 内服治療

甲状腺ホルモンの合成、分泌を抑える作用がある抗甲状腺剤(メルカゾール®、プロパジール®など)を内服。特に最初の2か月はじんま疹、肝障害、白血球減少などの副作用に注意が必要です。多くの症例で2か月ほどで甲状腺機能亢進によるしんどい症状はとれますが、一般的に2〜3年以上の継続内服が必要となります。3年で約30%の方が治りますが、難治性の場合は内服継続や無機ヨード内服併用や他の治療法(手術・アイソトープ治療)の選択も考えます。

② 手術治療

全身麻酔下にて甲状腺亜全摘術(甲状腺の1/5程度を残して摘出)が一般的です。再発をしないように甲状腺ほとんど摘出するため、術後に甲状腺ホルモン補充が必要となりますが、数年で多くの場合は補充不要となります。長所としては術直後から確実に甲状腺機能亢進が治せることです。短所としては手術・全身麻酔による合併症のリスク、頚部に襟状の傷跡が残る、入院が必要などがあります。

③ アイソトープ治療

放射性ヨード(アイソトープ)カプセルを内服し、放射線により甲状腺の働きを弱くします。米国で60年以上前に開始されていますが、放射線による白血病や甲状腺癌の危険性はほとんどないとされています。治療効果にも優れ、また甲状腺の縮小も期待できます。欠点はやや高い確率で甲状腺機能低下症になることです。妊婦・授乳婦や近い将来(6か月以内)妊娠希望のかたは受けることができません。専門施設での治療が必要になりますが、当院から専門機関への紹介も行っていますので、ご相談ください。

甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンが少なくなり代謝が低下するため、むくみやすい、寒がり、いつも眠たい、便秘、髪・眉毛がうすくなるなどの症状が出現します。
代表的な疾患として「橋本病(慢性甲状腺炎)」があります。橋本病は90%以上が女性という女性に非常に多い疾患です。甲状腺に炎症を起こすような体質(自己抗体)ができることが原因です。しかし、多くの場合では体質(自己抗体)はもっているが、実際に甲状腺の働きは弱っていない(甲状腺機能正常)であることが知られています。採血により甲状腺ホルモン及び自己抗体の測定、超音波検査などで行い、甲状腺ホルモンが低下している際にはホルモン補充療法を行います。

  • 代表的な疾患:橋本病(慢性甲状腺炎)

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